アラフォー・アラフィフでもできるTOEIC学習法
はじめに
昨今の社会情勢は以前にも増して英語が身近になり、また、20代の後輩社員などは頼りなく見えても英語がペラペラで引け目を感じてしまうこともあるかと思います。
いまはインターネットの普及もあり、英語を学習しようと思えば特にお金をかけなくても良質な英語学習教材を手に入れることができます。そして学習意欲のある若い世代はこれらを有効に活用して英語学習を進めていきます。
世間的には英語の垣根はどんどん低くなっていきますが、まだまだビジネスの一線で活躍しなければならない40〜50代はどうでしょうか?
私は外資系企業にいたので、特にオフィスでは多くの人が苦もなく英語を使用していました。
ただ、同世代の店舗スッタッフの多くは英語が喋れずに、英語を喋れる若いスタッフに海外の方の接客を代わってもらい、自身の販売機会を喪失している姿をたびたび見かけました。
いざとなればChat GPTやポケトークなどのテクノロジーの力を借りて、何とか対応できるかもしれませんが、同時にこれらのテクノロジーは英語をよりコモディティー化(一般化)して、今後、よりビジネスや日常生活の場で英語が必要となっていくことを示唆していると思います。
何の自慢にもなりませんが、都内某駅弁大学出身の私の大学時代の知人の多くが英語に苦手意識を持っています。大学受験で一通りの英文法や単語・熟語について学習していたはずなのですが、多くの友人がもったいないことにすっかりと受験英語を忘れてしまい、さらに苦手意識から英語を遠ざけて過ごす悪い意味でのスパイラルに入ってしまっています。
私も大学受験時は英語で苦しみました。
大人になってからの英語学習は本当に大変で、正直何から勉強して良いかもわからない状況でした。
英語がペラペラの帰国子女に学習法を尋ねたこともありますが、幼少期の言語学習と大人になってからの言語学習は脳の構造が異なっているため、あまり参考にはならなかったです。
バイリンガルではない大人がある程度のレベルの英語を身につけるのに何が良いか?
できるだけ無駄を省き、上達(というか知識の熟度)を高めるためにはどうしたら良いのかを考えた時、私はまずはTOEICで800点を目指すのが最も効果的であると考えます。
ちなみにここでいう効果とは、
・実際に役立つ英語力の獲得
・第3者に説明しやすい英語の指数
・2番目と重なりますが、会社での評価
また、外資系企業で働いていた私がTOEICスコアを聞いて思うことは以下の通りです。
(ただ、TOEIC自体はリスニングとリーリングのインプット型の試験のため、英語を使いこなすにはTOEIC取得後にアウトプットの学習は必要となります。詳しくは後述します)
・600未満:英語の基礎力が足りていない。
中学英文法と高校までの基本的な英単語の学習が必要。英語の仕事は任せられない。
・600〜700:基礎はできているが、普段英語に接していない。
メール作成や機械翻訳を併用した仕事なら任せてみる(たまに要チェック)
・700〜800:ある程度の英語力はあるけど、苦手な項目も。
往々にして会話力と文章読解スピードに難あり。
機械翻訳が可能な読み書きは任せてみる。会議などにもフォローしながらたまに参加してもらう
・800〜900:英語の基礎力は問題ない。あとは、英語に接する物量を増やしていく。
会議資料作成やミーティングにも参加してもらう
(ちなみにわたしは800点後半)
・900〜:英語力に関しては特に問題はない。あとは専門用語などを覚えてもらう。
より高度な会議資料やミーティングのファシリテートを任せる
英語初学者の中には、自身の英語学習の目標を「日常会話ができる」や「海外旅行で困らない程度」といった曖昧な目標を掲げる人を見かけますが、明確な効果測定ができないために初志貫徹しているのを見たことはありません。
特に日常会話は英語学習を進めていくと非常にハードルが高いことがわかり、むしろ最終目標となるような事案です。
そもそも言語学習自体、指数化することが難しく、また内容も多岐にわたるため、曖昧な目標では「雲を掴む」ような感覚に陥り、学習効果も実感できずに挫折していくのです。
次に私がよく見る失敗するケースは、目標を決めたものの、取り組んでから数年が経過して学習に進捗が見られないケースです。
わたしもTOEIC800点を目指し始めて3年間ほどダラダラと勉強していましたが、思うように成果が上がらずに挫折しかけたことがあります。
いたずらに長期間かけることよりも、2〜3ヶ月という短い期間で「一気呵成」に学習したほうが効率が良いことを後ほど気付かされます。
あれこれ試行錯誤を繰り返し、TOEICスコア800点以上取得を諦めかけていた頃、今からご案内する学習法に出会いました。
目に見えて成果が上がり、勉強開始から3ヶ月後には800点を超えるスコアを取得することができました。
この学習方法は、3ヶ月という語学学習において比較的短期間で英語上級者への入口たるTOEIC800点突破可能な英語力を効率的に習得できますが、相応の努力と毎日1〜2時間程度の学習を要します。
また、今はなき某ス○ードラーニングのように聞いているだけでOKといった類の怪しい学習法でもありません。
学習にあたり求められる英語力ですが、すでに基礎学習が一通り修了したTOEICスコア600点前後取得可能な方(中学英文法と高校過程の基本的な英単語力を有している(有していた))向けの学習法となります。
具体的な学習方法
学習期間:3ヶ月
1日の学習時間:1〜2時間(土日は3〜4時間)
必要なテキスト
TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ(朝日新聞出版)
1駅1題 TOEIC L&R TEST 文法特急(朝日新聞出版)
公式TOEIC Listening&Reading 問題集(最新のもの。2023年7月時点だとvol.9)
必要な機材
音声を流す必要があるのでスマートフォンかパソコン
学習スタイル:音読学習(ひたすら音読します)
金のフレーズと文法特急は最低10周やり込むことになります。
発声時に以下の3種類の発音は意識的に行なってください(具体的な発声の留意点は各自でご確認ください)。
「s」と「th」
「b」と「v」
「l」と「r」
その1 金のフレーズ(約1ヶ月)
【1周目】
金のフレーズは1000+αの単語を覚える必要があります。
1周目は100語ずつ、インターネットにアップされている音声を聞きながら音声をまねる感じで1フレーズずつ発声するようにしてください。
その際、左側に記載されている英語の文章を読み上げ日本語の意味を確認し、右側に記載されている単語の意味にも目を通します。
解説や類義語はこの段階では見ずに、音声の聞き取り、フレーズの発声、単語の意味に意識を集中します。それと付属の赤い下敷きも不要です。
この時に読み上げた単語は全て覚えていなくて大丈です(2〜3割覚えていれば上出来です)。
これを10日から2週間ほどかけて1周分(約1000語)読み上げます。
【2周目以降】
2周目以降ですが、少なくとも毎日200語は音読するようにしてください。
その際、日本語を見てすぐに(5秒以内)英単語が出てこない際は、その単語のみ3回読み上げるようにしてください。
また、読み方が怪しい単語のみ音声データや電子辞書などで発音を確認するようにしてください(その際、先にあげた3つの発音については意識的に変化をつけてください)。
この方法で何度か繰り返して頂きたいのですが、何度か繰り返すうちに読み飛ばしていた右側の解説や類義語に目がいくようになってくるはずです。
6週を過ぎたあたりで、意味が分からず3回音読を繰り返す必要のある単語数も減り、1日で半周程度(500語)は読めるようになっているかと思います。
8周目に入るとほぼ全ての単語の意味がわかるようになっているはずです。
あとは、どうしても覚えられない単語を集中的に音読して(私はテキストの単語をマルで囲っていました)、仕上げていきます。
なぜ音読しているだけで覚えられるのか
これは、脳科学に基づいた記憶方法を行なっているからです。
多くの方は短期記憶、長期記憶という言葉を聞いたことがあるかと思います。
英単語を覚える際、記憶を一時的に脳に留めることは短期記憶にあたります。
ある実験結果によるとほぼ完全に覚えた短期記憶も、20分後には42%、1時間後には56%、そして1日後には74%もの記憶が忘れ去られていくそうです。
ただ、ある程度忘却が進むと次第に忘却率は緩やかになることも実験によってわかっています。
短期記憶とは異なり、ある程度の期間記憶として保持できるものを長期記憶といいます。
学生時代の定期テスト前の一夜漬けと異なり、膨大な英語力を問われるTOEICのような試験では、長期記憶としてある程度の期間記憶を保持できなければ、学習効果も上がらず英語力も一向に伸びないことになります。
比較的短期間に短期記憶を繰り返すことで長期記憶となります(これを専門用語で「リハーサル」というそうです)。
分かりやすく記憶を脳にペンキで塗っていくようなイメージで言うと、「一度に完璧にペンキを塗っても次第にはげてしまうけど、何度も重ね塗りをするとムラなく塗ることができる。」と言う感じです。
今回ご紹介した学習法は、このリハーサルを意図的に行なって記憶を定着させる手法となります。
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その2 文法特急(約3週間)
1周目
1日1章を目標として解き進めるようにしてください。
分からなかった単語の意味、自分が誤って回答した選択肢、正解となる選択肢が一目でわかるように設問のページに記載しましょう。
ページをめくると解答と解説が記載されています。
1周目は回答・解説も丁寧に読み込み、設問の答え、意図、自分が間違えた理由を腑に落としこんでください。
仕上げにインターネットにアップされている音声を聴き、3回程度音読(リピーティング)してください。
上手に発音する必要はありませんが、先述した3つの発音とリエゾン(2つの音がつながって発音される)は意識してください。
テキストは7章構成なので、1週間で1周できると思います。
2周目以降
2周目以降は、テキストを見ながら音声を聞き、すぐに声に出して文章を音読してください。
1周目でテキストにあれこれ記載しているので、できるだけ解説ページは読まずに音声→音読をリズムよく繰り返して頂きたいのですが、文法の内容を細かくチェックしたい場合のみ、解説ページを読み解くようにしてください。
2周目以降は割とスムーズにテキストを進めることができると思います。
大体テキスト1周を2〜3日で終えられるペースで進めて、これを合計10周を目安に繰り返してください。
なぜ文法問題を音読するのか
文法問題なのになぜ音読するのか不思議に思われる方も多いと思います。
これが「その1」で説明した「記憶の重ね塗り」に続くこの学習法のキモなのですが、英語の聞き取りが出来ない理由はいくつかあり、その一つに発される音そのものが聞き取れていないことが挙げられます。
その理由として、基本的な語彙や文法の知識はあるのに、個々の英単語の発音や、文中で自然に発音される際に起こる音声の変化を知らないので、単語を耳で聞いたときに認識することが困難となります。
正しい英語の音声を聞き、自分でも言えるように発声練習することで格段に聞き取れる音が増えることが知られています。
近年のTOEICは難化傾向にあり、リスニングパートにも今までリーリングパートでしか出題されていなかったような単語や割と難しい言い回しも含まれることから、高得点を狙うためにもレベルの高い英単語や表現に拒否反応を示さず余裕を持って回答することが重要になります。
最初のうちはいわゆる「リピーティング」で音読をして、余裕が出てきたら「シャドーイング」に切り替えるとなお効果的になるかと思います。
注) リピーティング:文・文節で音の再生を止めて復唱すること
シャドーイング:音を聞くとほぼ同時に発声すること。遅れは大きくても0.2秒程度。
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その3 公式問題集(1〜1.5ヶ月)
いよいよ大詰め、公式問題集に取りかかります。
公式問題集は「その1」「その2」と異なり、Part毎にこなしていきます。
今まで2ヶ月程度、毎日1〜2時間学習していることになるので、ご自身のペースが掴めていると思います。
なので、「その3」では基本的な学習スタイルのみをお伝えします。
公式問題集は、テスト2回分を収録した本冊子と別冊の「解答・解説」の2冊に分かれていますが、基本的には書き込みは別冊にのみ行なって、特に本冊子のテスト掲載箇所には何も記載しないようにしてください。
別冊テキストは、自分専用の参考書を作る感じでガシガシ書き込みましょう。
Part1
まずはウォーミングアップでPart1を解いてみます。
問題の正解を確認後、今までの要領と同様に音読します。その際、回答だけではなく、質問、選択肢4つも音読するようにしてください。
Part1は3回くらいリピーティングしていただければ十分です。(1日で終わらせることができると思います)
Part2
Part2も、まずは一通り解いてみます。
次に音声と解答・解説を照らし合わせながら、自分の解答と間違っている問題はなぜ間違えたのかを確認し、「Part1」と同じ要領でわからない単語の意味や発音、文法上の留意点を別冊テキストに記載してください。
2周目からは音声と書き込んだ別冊テキストを使って、音読してください。
3〜5周くらいを目安に解くようにしてください。
Part3、4
Part3、4は、問題を解かずに音声と別冊から学習していきましょう。
解いた方が自分のペースに合っているという方は、最初に問題を解いても構いません。
まずは音声で会話を一通り聞き、次に会話と別冊に記載されているテキストを追いながら、単語や注釈など不明点を別冊に記載していきます。
その後、音読していただきたいのですが、今までの文章と異なり「感情」を伴う文章が増えていると思います。
そのような場合には、自分なりに感情を込めて発声していただけると、なお効果的に学習できていくと思います。
2周目からは今までと同様に書き込んだ別冊テキストを見ながら音読し、これを3〜5周繰り返してください。
Part5
ここからはリーディングパートになりますが、「その2」でも説明した通り音読によって得られるメリットが大きいので、Part5以降もこれまで同様に音読中心の学習を行います。
近年発行されている公式問題集はリーディングの音声データもしっかりと用意されているので安心してください。
Part5の学習法は、「その2」の学習法をそのまま流用できるので、仔細の説明は省きます。
Part5ですが、3〜5周を目安に学習してください。
Part6、7
最後の大詰めPart6、7ですが、まずは設問ごとに解いてみてください。
その後、今までと同様に別冊テキストに必要なことを書き込んで、音声を聴きつつ音読してください。
1周が終わったら、これも今までと同様に愚直に音読していきます。
物量が多くて大変ですが、3周程度は頑張ってみましょう。
ここまでで、公式問題集のテスト1回分の学習が終了したことになります。
期間でいうと2〜3週間かかったことになります。
続いてテスト2をテスト1同様に解き進めて頂きたいのですが、このタイミングで気分転換とモチベーションアップのために週末などの休みを使って実践形式でテスト2を解いても良いと思います。
テスト2は初見の問題だと思いますが、特にリスニングパートの理解度が飛躍的に上がっていることを実感できるかと思います。
モチベーションが高まったところで、気合を入れてテスト2をテスト1同様に学習していきます。
なぜ最新の公式問題集を勧めるのか
さて、これまでなぜ繰り返し学習するのか(「その1」)、なぜ音読が特にリスニングの音声の理解に必要なのか(「その2」)をお伝えしましたが、
最後になぜ「最新の公式問題集」を使うのかについて説明したいと思います。
長年TOEICに触れてきた人は実感されていると思いますが、TOEICは年々難化しており、具体的には数年前は得点源といわれたPart1、2に引っ掛け問題があったり、解答する際に少し考える必要があったりと、何も知らずに古い問題集しかやり込まずに受験すると思うように点数が伸びない、というケースが多々見受けられます。
それを回避するために、最新の公式問題集を使用し最近の傾向を知ることは得点アップに直結します。
それと、わたしははこれが公式テキストの最大の利点と考えるのですが、公式問題集の音声のナレーション担当者は実際の試験でもナレーションを担当しています。
やはり聴き慣れた音声のナレーションの方がリスニングの理解度が高いようです。
さらに、これは個人差も大きいと思いますが、わたしは今のナレーションを担当しているイギリス人女性の音声が苦手で彼女のナレーションが入った設問の正答率が格段に落ちてしまいます。
公式問題集で彼女のナレーションを聴き倒すことによって苦手意識をなくし、最近のテストでも得点を落とさず目標とするスコアをキープできていると思っています。
以上がわたしが数年間突破することができなかったTOEIC800点の壁を乗り越えた学習法となります。
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まとめ
ポイントをおさらいすると、「厳選されたテキスト」を「一気呵成」に「3ヶ月という限られた期間」で「何度も」「音読して」学習することです。
学習期間中の3ヶ月間は、本当に大変です。
私は夜はアルコールを摂取しないと日々の生活に支障をきたすタイプなので、朝5時に起きて1時間半〜2時間の学習時間を捻出しました。
TOEIC800点は簡単に取得することはできません。
何度かTOEIC受験をして、800点突破を諦めかけた人ほど、この学習法を取り入れて欲しいと思っています。
また、年齢ですが若い頃の方が記憶力は良かったことは事実ですが、この学習法を用いることで40代、50代の方であってもチャレンジすることができると思います。
わたしはこの方法を用いて40代前半でTOEIC800点を超えることができました。
今回ご紹介した音読学習法をしっかりとこなすことで英語力の底上げはできており、十分TOEICで800点取得できる実力はついているはずです。
ただ、先述した通り近年はトリッキーな問題が出題されることが多いので、いくつか得点アップのテクニックみたいなものは習得しても良いかと思います。
実際にTOEIC800点代でできること
冒頭でTOEICの点数を聞いて経験的に思うことを記しています。
では、この方法を用いて英語の勉強をしてスコア800点以上取得すれば、すぐに喋れて文章をスラスラ書くことができるのかというと、残念ながらそうはなりません。
なぜかというと、アウトプットの経験が圧倒的に少なく、せっかく英語の素地ができていてもそれらをうまく発することができないからです。
なので、TOEIC800を取得できたら次はぜひアウトプットの訓練を始めてみてください。
今までの学習により、すでに十分な単語力と文法力、英語を聞きとる力は備わっています。
個人差はありますが、2〜3ヶ月程度、アウトプットの練習をすれば、十分に英語の海に漕ぎ出せるだけの力はついています。
アウトプットの方法ですが、すでにあなたは学習法を身につけているのでご自身の力で見出すことができると思います。
蛇足ですが一応わたしのお勧めは、「瞬間英作文」とオンライン英会話がコスパもタイパも高く、実践的であると考えております。
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(おしまい)
もし、実際にこの学習法を試したいけど「いまいちここがわからない」という点があればお知らせください。
可能な限りお答えしていきます。
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