合成石?類似石?(ダイヤモンド編)

Crio Trading ブログ

ダイヤモンド(天然)・合成ダイヤモンド・類似石

テクノロジーの進化も相まって、市場にはさまざまなダイヤモンドライクな商品が出回っています。
宝飾業界に20年以上いるわたしには、いろんな選択肢が増え価格帯や年齢層に見合った色とりどりの宝石を選べるようになったように映りますが、さまざまな誤解や時に悪意のある販売者によってミスリーリングを引き起こしている感も否めません。

ダイヤモンド(天然)

説明不要のいわゆるダイヤモンドです。
大きさ(正確には重さの単位カラット)や色合い(カラー)、内包物やキズなどを総合的に判断した透明度(クラリティ)、研磨の正確性(カット)の4Cと呼ばれる要素で評価されます。

ダイヤモンド自体は炭素が地中奥深くで結晶化して生成され、地殻変動で地表に姿を表します。純粋な炭素の結晶体であれば色(カラー)は透明なのですが、結晶化する際に何かしらの物質を取り込むことでさまざまな色合いを示します。窒素が最も取り込まれやすく、窒素を取り込むことでやや黄色がかった色合いを示します。黄色以外の色合いを示すことがありますが、それらはファンシーカラーダイヤモンドと呼ばれ非常に高額で取引されています。

〈スポンサーリンク〉

また、あまり知られていませんがダイヤモンドにもゴールドや原油のように指標となる価格が存在します。ラパポート(Rapaport Price Report)と呼ばれ週1の頻度でアップされています。ただ、宝飾産業に携わっていても存在を知らない人も多く、それこそゴールドや原油のように先物取引があるわけでもないので、市場価格に直結しているとは言い難い状況です。

合成ダイヤモンド

近年、急激に市場のシェアを伸ばしているダイヤモンドです。
ダイヤモンド産業で中心的な役割をはたしていたDe Beers社が2018年に合成ダイヤモンドを採用した新規ブランド展開を発表したことは宝飾業界を少なからず驚かせました。

合成ダイヤモンドは、化学組成式にも見た目にもダイヤモンドです。
違いは自然環境下で結晶化するか人工的に生成するかの違いです。生成方法は、今回詳細は省きますが、人工的に高温高圧の環境を作り、その中で生成するHPHT方式(Higt Pressure Higt Tempatureの略です。日本語と温度と圧力の位置が反対ですね)と化学的に気体状態の炭素からダイヤモンドを生成するCVD方式(Chemical Vapor Deposition)の2種類があります。

特にCVD方式の技術が著しく発展したことで、従来に比べて安価で大きなダイヤモンドを生成することが可能となりました。

先に述べた通り、合成ダイヤモンドの見た目は天然のダイヤモンドと区別がつきません。
わたしもGIA G.G.資格を持ち、長年、いろいろな宝石を見てきましたが、普段持ち歩いているようなルーペやペンライトで見分けることは不可能です。
見分けるためには、それなりの設備のある研究機関や鑑定機関で検査する必要があります。

天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドの一番の違いは、天然ダイヤモンドには何かしらの不純物が入り、合成ダイヤモンドは完全な炭素の結晶体を作ることができる点にあります。(ただ、あえて不純物を入れて天然ダイヤモンドとの判別を困難にすることもできるようです。)
なので、あまりに市場価格と比べて安く最上クラスのダイヤモンドが売られているなら、合成ダイヤモンドの可能性を疑った方が良いかもしれません。

〈スポンサーリンク〉

類似石

類似石はダイヤモンドではありません。
見た目はダイヤモンドに似ていますが(そうではないものもあります)、鉱物としては全く別の鉱物となります。類似石の歴史は古く、意図せずダイヤモンドの代替品として用いられているケースやあえてダイヤモンドに見立てて人工的に作り上げたものなど多種多様です。
下記に代表的な類似石を合成石、天然石に分けて記載しておきます。

合成石
モアサナイト
キュービックジルコニア(CZ)
透明サファイア(合成石)
ガラス・ラインストーン

天然石
ジルコン
透明サファイア(天然石)
クオーツ

類似石は合成ダイヤモンドと異なり、宝石に知見のある方が見れば見分けることはそれほど困難ではありません。モアサナイトについてはルーペだけでは不安が残りますが、「モアサナイト・チェッカー」という判別機をほとんどの宝石店で用意していると思います(Amazonでも売っています!!)。

〈PR〉

個人的には

今まで説明してきた通り、ダイヤモンドには天然のダイヤモンド、人工、そしてダイヤモンドではない類似石とさまざまな形で市場に展開しています。そして、多くにお客様は天然のダイヤモンド以外は「まがい物」という認識でいると思います。

例えば、人生の記念となる婚約指輪であれば天然のダイヤモンドが相応しいと思います。
一方、普段惜しげもなく身につけるペンダントや学生同士気兼ねなくするプレゼントなんかは、合成ダイヤモンドや類似石を使ったリーズナブルなアクセサリーを楽しんでいただければ良いかと思います。

ただ、残念な事にダイヤモンド購入時のトラブルを漏れ聞きます。
もちろん、お客様が勘違いしてしまったのかなと思うこともあるのですが、トラブルの多くが売り手側の勘違い、知識不足、説明不足が多いように感じます。
特にわたしも店舗運営をしているECショップ界隈において、まれに「おやっ?」と思うような記載を見かけます。
加えて、勘違いだけならまだしも、明らかに故意にミス・リーリングを誘う記載も見受けられ、非常に悲しい気持ちになることもあります。

現状は買い手も信頼のおけるショップや担当者を見つけ、類似商品と比べて極端な価格差がないことを確認してから購入することが最善の防御策ではないでしょうか。

(おわり)

Crio Trading ブログ
執筆担当者
この記事を書いた人
ぶたねこ店長

現在、個人事業主としてECショップ運営を中心に活動しています。

23年間、会社勤めをしていました。うち22年間は最大手の外資系宝飾ブランドに所属していました。
店頭業務にも携わっていましたが、主にオフィス業務で商品開発、販売促進、マーケティング、取引先との交渉など多岐にわたる業務をこなし、さまざまな知識と経験を得ることができました。

さらに、GIA G.G.(米国宝石鑑定資格)というマニアックな資格を米国で取得しているので、宝石や英語学習に関する見識があります。

10年以上に渡り出張族(日本国内がメイン)として、佐賀県以外の都道府県をすべて訪問し、地方の居酒屋などもよく知っています。

これらの事をブログで発信していきます。
「Curio Trading ブログ」(宝石や百貨店などの特化ブログ)
「店長のひとりごと」(雑記ブログ) という構成になります。
ぜひご一読ください。

Curio Tradingをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました