ダイヤモンドは永遠の輝き?

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ダイヤモンドは永遠に輝くのか?

「ダイヤモンドは永遠の輝き」このフレーズを聞いたことがある人は多いと思います。
De Beers(デビアス)という会社があり、現在はLVMH傘下のジュエリーブランドなのですが、その前身はダイヤモンド業界の数々の慣習を作り、ダイヤモンドの普及活動を世界的に行っていました。

「ダイヤモンドは永遠の輝き」というフレーズは、同じくらい有名なフレーズである「婚約指輪は給料の3ヶ月分」というフレーズと共に先のデビアス社が1970年代からTVコマーシャルを中心に広げたものです。

では、本当に「ダイヤモンドは永遠の輝き」なのでしょうか?

秀逸な宣伝文句の功罪

後ほど詳しく述べていきますが、ダイヤモンドは他宝石と比べて非常に硬く、安定性も高い宝石なのことは間違いないのですが、通常の生活環境下で次の2つのことに気をつける必要があります。1つは衝撃でもう1つは高熱です。

「硬さ」には2種類ある

モース硬度

宝石には2種類の硬さがあるのをご存知でしょうか?
1つはひっかきキズに対する相対評価を数値化したモース硬度と呼ばれる尺度です。モース硬度は宝石や鉱物などのひっかきキズに対する硬さを1〜10の指数で表しています。
そして、ダイヤモンドのモース硬度は10であり、他の宝石や鉱物に比べ最も硬いことを示します。

靭性(じんせい)

そしてもう一つの硬さの尺度に、素材の粘り強さ、壊れにくさを示す靱性(じんせい)があります。
こちらは衝撃などの瞬発的な力への耐性を数値化しているのですが、ダイヤモンドの靭性は他宝石と比べて決して高いわけではありません(低いわけでもないので注意)。
そして、もう一つダイヤモンドならではの問題があります。
少し専門的な話になりますが、ダイヤモンドの劈開性(クリベージ)と呼ばれるものです。
ダイヤモンドの結晶は炭素が立方体に並んだ構造をしているのですが、ある一定の方向に対して割れやすい。という特徴があります。

これにより、「ダイヤモンドは世界一硬い」という偏った知識だけで雑にダイヤモンドを扱ったり、ダイヤモンド同士を強く擦り合わせたりすると思いがけずキズがついたり、最悪の場合、割れてしまうことがあるのです。

ダイヤモンドは燃える。やがて炭化し消滅する

もう一点気をつけていただきたいのが高温です。
先にも少し触れましたが、ダイヤモンドは炭素で構成された結晶体です。
少し夢のない話なのですが、木炭や鉛筆の芯などを構成する元素と同じになります。

炭素(C)の特徴として、熱を加えると酸素(O2)と結びつき、二酸化炭素(CO2)となってやがて気化して消えてしまいます。
もう少し具体的にいうと、600℃以上の熱を加えると黒鉛化が始まります。800℃まで加熱すると炭化し始め、1000℃以上に加熱すると徐々に燃えて二酸化炭素になります。

仮に酸素と結び付かなかった場合は、固体であるダイヤモンドの融点が3550℃、気体になる沸点は4800℃です。
こちらは日常ではそうそう遭遇するような温度ではありませんが、実験室で4800℃以上の熱を発生させて気化した炭素を再結晶させる技術が、CVD方式といわれるダイヤモンドを人工的に合成する技術になります。

話が逸れましたが、600℃を超える高温は日常生活では火災発生時くらいですが、ドライヤーの熱で変色した、という話も聞くのでドライヤーを使う時や炊事する際はダイヤモンドリングを指から外した方が賢明です。
また、手持ちのジュエリーを修理加工する際は、加熱した際に1000℃くらいになることもあるので変色の可能性もありますが、熟練した職人は熱によるダメージも考慮して修理加工をおこなっています。

宝飾業界経験者としては

とまあ、少し怖がらせてしまう話が続きましたが、実際にどの程度の頻度で発生するのでしょうか?

わたしはこの業界で20年以上働いていますが、ダイヤモンドの割れ・カケについては数年に一度見かけます。そのほとんどがいわゆるメレダイヤと呼ばれる0.1ct未満の小さなダイヤモンドです。

また、(お客様の手元にある状態での)高熱よる変色については、その遭遇頻度もより低く、今まで2〜3回見たことがあるのみです。

なので、「ダイヤモンドは永遠に」というフレーズを過信せずに、大切に使っていただければその輝きが損なわれることはないはずです。

おまけ

記事作成にあたり、改めてダイヤモンドについて調べていたのですが、宝飾用としてマーケットにはでていないもののダイヤモンドよりも硬い鉱物というのは存在しているそうです。

・ロンズデイル石(ロンズデーライト・六方晶ダイヤモンド)
ロンズデイル石は、グラファイトを含む隕石の衝突によって形成されることがまれにあるそうです。
ある研究チームが、ロンズデイル石に鋭利なもので圧力をかけるという実験を行ったところ、なんとダイヤモンドよりも58%も硬いことが分かりました。

・ウルツァイト窒化ホウ素
ウルツァイト窒化ホウ素とは、火山性の残留物から得られる物質で、現在地球上で最も硬い物質だといわれています。
基本的な構造はダイヤモンドとほぼ変わらないそうですが、化学的な結合がいくつか加わることによって、ダイヤモンドよりもさらに硬い物質になっているのです。

さらにこれらより硬い可能性がある「カルメルタザイト」なんて鉱物が2019年に発見されたりと、科学に進歩はまた新たな発見を私たちにもたらしてくれそうですね。

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(おわり)

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執筆担当者
この記事を書いた人
ぶたねこ店長

現在、個人事業主としてECショップ運営を中心に活動しています。

23年間、会社勤めをしていました。うち22年間は最大手の外資系宝飾ブランドに所属していました。
店頭業務にも携わっていましたが、主にオフィス業務で商品開発、販売促進、マーケティング、取引先との交渉など多岐にわたる業務をこなし、さまざまな知識と経験を得ることができました。

さらに、GIA G.G.(米国宝石鑑定資格)というマニアックな資格を米国で取得しているので、宝石や英語学習に関する見識があります。

10年以上に渡り出張族(日本国内がメイン)として、佐賀県以外の都道府県をすべて訪問し、地方の居酒屋などもよく知っています。

これらの事をブログで発信していきます。
「Curio Trading ブログ」(宝石や百貨店などの特化ブログ)
「店長のひとりごと」(雑記ブログ) という構成になります。
ぜひご一読ください。

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