GIA G.G.は宝石業界内でどの様な位置付けなのか?

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GIA G.G.の位置付け

以前、「宝石鑑定資格≒GIA G.G.」である、という話をしましたが(「GAI G.G.ってなに?」)、実際にGIA G.G.は宝石業界内でどのように思われているのでしょうか?

この意見はあくまで、米国でGIA G.Gを取得後、外資系のダイヤモンド卸会社で1年間勤務し、その後22年間、外資系大手ジュエリーブランドに勤務経験のあるわたしの主観に基づくモノですのでご留意ください。

わたしの意見は・・・

最初にわたしの意見からお伝えします。

あなたが日本国内でジュエリー業界に飛び込みたいと思い、GIA G.G資格の取得を考えているのであれば、小売や製造、デザイン等業種は問わず、取得はお勧めしません

もし、あなたが日本を飛び出し国際舞台でジュエリーの関わる仕事がしたくて、GIA G.G.資格の取得を考えており、後述する金銭的な課題をクリアできるのであれば、取得しても良いかもしれません。

では、なぜわたしがこのような考えに至ったのかについて説明していきます。

金銭面

まず最初に思いつくのが、学費を含めた金銭面です。

カールスバッド本校とニューヨーク校がある米国をベースに話を進めます。
私が通学していた20年以上前から、「GIAは高額だ!!」というのは有名でした。
ちょっとうろ覚えで申し訳ないのですが、わたしが入学した頃、半年間の学費で12,000ドルくらいしていた記憶があります。

デフレが常態化している日本とインフレが進む米国では、金銭面で差が出てくるのはしょうがないことはわかっていますが、2023年現在、GIAの学費は26,000ドルを超えています。1ドル=130円として340万円です!

日本の国立大学の4年間の学費が215万円、私立大学の学費が400万円程度といわれています。しかも、GIAは専門学校扱いでカリキュラムも6ヶ月です。
学歴や金額的なことを踏まえれば、大学で鉱物学や地質学を勉強したほうがコストパフォーマンスは格段に優れています。

さらに生活費もかかってきます。
GIA本校のあるカールスバッドは西海岸有数のリゾート地です。その立地の良さをウリにもしていますが、このご時世、その立地の良さは裏目に出てしまっていて、住宅の家賃も青天井です。しかも頼んでもいないのに、GIAが生徒に斡旋するのはプール付きのおしゃれなコンドミニアムばかりです。

私は米国の経験しかないので聞いた話にはなりますが、バンコクや台湾であれば米国よりは安く抑えられるそうです。それでも日本に比べればはるかに割高で、さらに後述するコネクション作りという面で米国に劣ってしまいます。

日本と海外でのG.G.の立ち位置の違い

GIA G.G.として宝石業界で仕事をしていると、日本と海外(といっても米国とアジアの一部地域だけですが・・・)では、決定的な違いを感じます。

日本では、「へ〜、G.G.持っているんだ、すごいねー」みたい感じで特に関心を持たれないか、あるいは「G.G.なんか使えないよ」などとG.G.のこともろくに知りもしないのに、なぜか否定的に捉えられるかのどちらかです。

事実わたしも外資系でありながら、役職が管理職となり百貨店要人との交渉が主な業務となった際に、直属の上司から名刺からGIA G.G.のタイトルを消すように指示されました。理由は、GIA G.G.は売場出身という感じがして、百貨店経営層と交渉時に低く見られる可能性がある、いう理由でした。

一方、海外では、特殊な高額商品の開梱や検品といったGIA G.G.のみに許可される業務が存在したり、マーケティングや営業戦略についての会議で所属部署の垣根を飛び越えてGemologistとしてどの様に考えるのか問われたりと、GIA G.G.という資格がしっかりと認知され、その分野のプロフェッショナルとして扱われます。(代わりに責任も伴いますが・・・)

このように、日本では海外に比べG.G.は低く見られがちです。
理由はいくつか思い当たる節もあるのですが、反感を招きかねない意見も含みますので今回は割愛します。

コミュニティの形成

大学や他の専門学校にもいえることですが、こういった学校に通学する理由の1つとして、同じ志を持ち将来同じ業界で仕事をすることとなる仲間とのコミュニティ形成があります。

ひと昔前のように東京と大阪にGIAが運営している学校があれば、当然そこに人が集まり、自ずとコミュニティは形成されていくかと思います。ただ、これが米国となると話は違ってきます。

G.G.のカリキュラムですがだいたい年に6〜8回くらい開催されて、1クラスに20名前後の生徒がいます。そのうち1〜2割程度の日本人がいるのですが(コロナで状況が変わっているかもしれません)、その3〜4人でコミュニティを作っても小さすぎます。

さらに留学経験者にはわかると思いますが、海外での語学習得最大の敵は日本人コミュニティにどっぷりと浸かることです。
GIAは宝石についての専門的な学校だから英語習得関係ないじゃん、と思われるかもしれませんが、わざわざ米国でG.G.取ろうと思っている人の多くは、英語習得とGIA G.G.資格取得の2つを目標にしています。
そして、大体の留学生は知っているのです。英語習得最大の敵は日本人でつるむ事だと。。。なので、コミュニティ作りは容易ではない可能性があります。

そしてこれが英語圏以外の国であれば・・・言わずもがなな結果になると思います。

そんなわけで、G.G.取得後に国内での就職を考えているとしたら、米国のGIAで必要なコミュニティを形成することは困難です。

じゃあ、G.G.なんて取得する意味ないじゃん!

これまでのわたしの意見を踏まえると、G.G.取得について疑問を感じることと思います。
冒頭でもお伝えしたとおり、国内で就職するつもりなら、G.G.取得はお勧めしません。費用対効果資格取得から得られる優位性もあなたの期待値を満たすことはないと思います。

一方、海外に飛び出すことを考えているのであれば、G.G.は知名度も権威もあり、資格取得後、ジュエラーとしてキャリアパスになりうる資格です。

ただ、海外に就職希望であってもGIAの学費の割高さはネックとなります。
確かにGIA自体は、恵まれた立地にキレイな校舎が建ち、学校内の機材もサンプルの宝石類も十分保有し、最高の環境下で宝石の学習に勤しむことが出来ます(リゾート地なので、校外ではバケーションを満喫するアメリカ人だらけですが・・・)。

わたし自身、G.G.はしっかりと勉強と実技の習得をしなければ獲得できない、意味のある良い資格だと思っています。

なので、あなたが世界を舞台に活躍することを夢見ていて、さらに金銭的なことは全く気にしない環境にいるか、あるいは2023年1月時点の歪になってしまった世界が解消された後であれば、G.G.の資格を取得しても良いと思いますし、その際には応援させていただきます。

(おわり)

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執筆担当者
この記事を書いた人
ぶたねこ店長

現在、個人事業主としてECショップ運営を中心に活動しています。

23年間、会社勤めをしていました。うち22年間は最大手の外資系宝飾ブランドに所属していました。
店頭業務にも携わっていましたが、主にオフィス業務で商品開発、販売促進、マーケティング、取引先との交渉など多岐にわたる業務をこなし、さまざまな知識と経験を得ることができました。

さらに、GIA G.G.(米国宝石鑑定資格)というマニアックな資格を米国で取得しているので、宝石や英語学習に関する見識があります。

10年以上に渡り出張族(日本国内がメイン)として、佐賀県以外の都道府県をすべて訪問し、地方の居酒屋などもよく知っています。

これらの事をブログで発信していきます。
「Curio Trading ブログ」(宝石や百貨店などの特化ブログ)
「店長のひとりごと」(雑記ブログ) という構成になります。
ぜひご一読ください。

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