なぜブランド品は高いのか? ー製品編ー

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ブランド品はなぜ高い?

その1 製品編

例えばダイヤモンドリングを購入しようとして、御徒町や商店街の宝石店と百貨店の平場、そして海外ラグジュアリーブランドを比較するとしましょう。

比較しやすいように、
デザイン: 立てヅメ(プロング セッティング)
リングの素材: プラチナ
ダイヤモンド:1カラット
ダイヤモンドのグレード: DカラーのVVS1
とした場合、大雑把な計算だが、町の宝石店→200万円、百貨店の平場→400万円、海外ブランド→600万円くらいが目安となります。(2022年12月時点)

では、なぜこのような価格差が生じるのでしょうか。
価格を決める要素を分解して、価格差が生じる仕組みを紐解いていきましょう。

ダイヤモンドの素性とは

最も大きな要素であるダイヤモンドですが、いくつもの要素によって買値が全然違ってきます。

値札には記載されていませんがが、鑑定書には明記されで値付け影響する要素があります。

少し引っ掛け問題のような感はありますが、まずは「カット」についてです。
カットはダイヤモンドの主要素である4Cの一つで値札に記載していることも多く、カットの良さを売りにしているブランドも多数あります。今回はあえて初期条件から「カット」を外しましたが、一部の宝石店ではこちらから聞かない限りカットについて触れずに説明してくることもあるので注意が必要です。

次に紫外線蛍光性(fluorescence)です。
ほぼすべての鑑定書に明記されています。多少の紫外線蛍光性は問題ないのですが、あまり強いとダイヤモンドが曇って見えたりします。

原産地

ダイヤモンドは鉱物なので、当然産出地が異なってきます。
わたしの知る限り2023年の時点ではまだ顕著な違いは見せていませんが、そう遠くない未来には値付けに影響してくるはずです。
その理由として、まずは国際社会での政治的な要素です。事実、同じ鉱物のルビーやエメラルドなどは政治的は理由を背景に、一部産出国のルビーやエメラルドが高騰したり反対に取引停止になったりしています。

大手ブランドは、ブランドイメージを損なう危険性のある産地を扱うサプライヤーを避け、安全な原産地のダイヤモンドを選ぶ傾向があり、産地を明確にできる透明性のあるサプライヤーは割高となります。

「紛争(地)ダイヤモンド」と「キンバリープロセス」

2006年にレオナルド・ディカプリオ主演の「ブラッド・ダイヤモンド」が公開されたことを機に紛争ダイヤモンドという言葉が一般的に知られ問題となりました。
紛争ダイヤモンドとは、内戦等の紛争地帯で産出されるダイヤモンド(それ以外の宝石含む)が紛争当事者の資金源となっている問題をいいます。

時間軸は前後しますが、宝飾業界でも2000年代に入ると問題が顕在化してきました。紛争ダイヤモンドの取引を規制するキンバリープロセス認定制度が2002年に制定され、先の「ブラッド・ダイヤモンド」の公開も相まって、危機感を持って対応に迫られました。
原産地の問題と同じように、大手ブランドはキンバリーブロセスを厳守したサプライヤーと取引する必要があり、そういったサプライヤーは当然のことながら割高(というか適正価格)となります。

製造過程

次に製造過程についてみていきます。
製造時のコストダウン方法として、人件費を抑えることのできる中国やベトナムなどの新興国に工場をつくり製造することが一般的です。

ただ、垂直統合型(自社およびセカンドパーティ内で製造から販売まで一貫して行うこと)の製品作りを売りにしている大手ブランドは、安易に人件費の安価な新興国に製造元を移行せず、伝統もありクオリティも担保できる自国や昔からの依頼先で製造することになります。
想像できると思いますが、特に欧米のジュエリー工房は総じて割高です。

また、いわゆる「メイド・イン・ジャパン」も人件費自体は他アジア各国と賃金差は縮まってきているのですが、構造的な問題も多く製造コスト自体は欧米に次いで割高となってしまっています。

関税

実際にわたしは海外ブランドに勤めていました。
そんな中、内外価格差(要は日本国内とブランド発祥国の定価の違い)について質問される取引先やお客様が見落としがちな必要コストに「関税」が挙げられます。

商品を輸入する際、関税を5%ほど支払う必要があり、その関税は当然のことながら販売価格に反映することになります。

個人旅行などでは、よほど高額なモノを購入した時以外にはあまり気にしませんが、会社であれば関税は重くのしかかります。

まとめると

同じようなデザインのリングの製作コストだけとっても、これだけ多種多様な選択肢があります。これらの選択肢の中から各宝飾メーカー(ブランド)が自社の方針に最も相応しいと思われる方法を採択していくのです。

例えば海外ラグジュアリーブランドでは、上記の中で最も安全で信頼のおける選択肢を選びます。そのために一見すると同じよなダイヤモンドリングであっても、他社と比較して大きなコスト差が発生することになるのです。

では、次にマーケッティング的な要素で価格差を紐解いていきたいと思います。

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(その2につづく)

 

 

 

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執筆担当者
この記事を書いた人
ぶたねこ店長

現在、個人事業主としてECショップ運営を中心に活動しています。

23年間、会社勤めをしていました。うち22年間は最大手の外資系宝飾ブランドに所属していました。
店頭業務にも携わっていましたが、主にオフィス業務で商品開発、販売促進、マーケティング、取引先との交渉など多岐にわたる業務をこなし、さまざまな知識と経験を得ることができました。

さらに、GIA G.G.(米国宝石鑑定資格)というマニアックな資格を米国で取得しているので、宝石や英語学習に関する見識があります。

10年以上に渡り出張族(日本国内がメイン)として、佐賀県以外の都道府県をすべて訪問し、地方の居酒屋などもよく知っています。

これらの事をブログで発信していきます。
「Curio Trading ブログ」(宝石や百貨店などの特化ブログ)
「店長のひとりごと」(雑記ブログ) という構成になります。
ぜひご一読ください。

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