その2 マーケティング編
ブランディングの重要性
ブランディングという言葉があります。
Wikipediaによると、「ブランドに対する共感や信頼などを通じて顧客にとっての価値を高めていく、企業と組織のマーケティング戦略」とあります。
先述した製品に対してのクオリティの優位性も重要ですが、このブランディングこそがブランドをブランドたらしめる最大の要素であり、最もコストにつながる要素でもあります。
そして、ブランド各社において、「マーケティング=ブランディング」となっています。
ここでは、具体的にどのようなマーケティング手法があり、どのようにコストが発生するか(すなわち販売価格に上乗せされるのか)を紐解いていきましょう。
マーケティング
まずはマーケティングです。
ここでいうマーケティングとは、狭義のマーケティングという意味でいわゆる宣伝・広告活動を示します。
一昔前であれば、雑誌とタイアップしてキレイめな広告を女性ファッション誌に掲載し、ドラマ撮影時の衣装として使ってもらうなどの王道のマーケティング活動が主でした。
しかし、現在はより多岐に渡り、1つ当たりの広告・宣伝費は下がっているものの、SNSでの発信やインフルエンサーへの商品の貸し出し(という名のギフティング)、果てはあまり大きな声では言えないステルスマーケティングの仕込みなど、細かい出費がかさんでいきます。
そして、この時の雑誌の種類やモデルやインフルエンサーはそのブランドイメージを壊すことがないように慎重に選ぶ必要があるのです。
商品(プロダクト)デザイン
前回テーマの「製品」と被るところもありますが、商品のデザインについてもノン・ブランドとブランド品は異なります。
まず、商品のデザインですが、その会社の社員がデザインする場合(「イン・ハウスデデザイナー」なんて呼んだりします)と社外のデザイナーに商品デザインを依頼する場合が考えられます。
当然のことながら外部デザイナーは、実力や有名度でデザイン料がピンキリとなっています。
外部デザイナーは、画家や有名モデルあるいはデザインとは無縁の芸能人だったりと様々です。
国内ブランドなんかは、売れている芸能人とタイアップしたコレクションなんかを出したりしますよね。
海外ラグジュアリーブランドは、画家やモデル、あとは同業他社の著名デザイナーを引き抜いたりします。
アフターセールスサービス
意外に思われるかもしれませんが、購入後のアフターセールスサービスが「顧客満足度=ブランディング」に直結します。
町のアクセサリーやECショップなんかでは、買ったはいいけど修理不可だったり、購入後数年経つと購入履歴をつかめなかったりと「おやっ」と思うことが少なからずあります。
一方、それなりの有名ブランドであれば、アフターセールスサービスについてさほど心配する必要はありません。
修理も特殊な事情がない限りは対応しますし、古い商品であっても刻印一つ入っていれば、意地で販売実績や資料などから自社製品か否かを判断します(真贋判定とは違うので注意してください)。
そういった修理加工技術や資料の継承には、やはりそれ相応のコストがかかるのです。
店舗環境・接客
これは皆さんが実際に店舗で購入する際に、最も強くそのブランドを印象付けるものとなります。
どんなに商品のデザインやクオリティが良くても、どんなに雑誌にキレイな写真が出ていても、指紋だらけのディスプレイの中、無愛想な店員に接客されたら幻滅してしまいますよね。
店舗環境でいうと、例えば海外高級ブランドは使用されている建材から調度品まで、非常に高価なものを使用しているのがわかります。
また、シーズナルで変わるディスプレイなども、非常にキャッチーで洗練されたディスプレイ什器を使用しています。
特にエルメスやヴィトンなどは、思わず足を止めて見入ってしまいます。
そして接客ですが、多くのラグジュアリーブランドは従業員の教育に非常に多くの時間を割きます。さらに、評判の良い販売力のあるスタッフはエージェントを通して引き抜きのオファーが入ることもあります。
こうして質の高い販売員がラグジュアリーブランドには集められます。
接客業というのは比較的賃金が他業種に比べて低いといわれていますが、海外ラグジュアリーブランドのスタッフは総じて賃金は(接客業の中では)高めです。
まとめ
このように、多種多様な経費が同じダイヤモンドリング1つ販売するのにも発生し、各ブランドが販売している製品にコストとして上乗せされていきます。
ただ、これを割高なのか割安なのかという2択で捉えることは、やや短絡的でそれぞれの予算や目的に応じて選んでいくことが最適解だとは思います。
ただ・・・
ここ数年の傾向を見て個人的に思うこと
コロナ前から兆候があり、コロナ後に社会問題になっていることなのですが、欧米ではインフレが加速度的に進み、その傾向は高額品ほど顕著です。値上がり率も他商品に比べ高級消費財は著しく高く、モノによっては30%を超えた値上がりをしているケースも見受けられます。
さらに、昨年の歴史的な円安の煽りを受けて、特に海外ラグジュアリーブランドの国内での値あがり率は異常なほど高いです。現状の値上がり率は今まで説明してきた諸々のコストアップの範疇を超えてしまっているように感じます。
今後、もし海外ラグジュアリーブランドの価格がより高騰していくとすると、あえて割高にすることで特別感を演出している印象は拭えず、一般消費者が現状のように百貨店で少し背伸びをして購入するモノでは無くなってしまうかもしれません。
(おわり)
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